歴史

 雅楽は千二百年以上の歴史を持ち、日本の古典音楽として、また世界の古典音楽として外国でも非常に高く評価されてきています。日本古来の儀式音楽や舞踊などと、仏教伝来の飛鳥時代から平安時代初めにかけての四百年余りの間に、中国大陸や朝鮮半島から伝えられた音楽や舞、そして平安時代に日本独自の様式に整えられた音楽です。
 奈良時代・平安時代から、雅楽の演奏は宮廷は勿論、寺院や神社において盛んに演奏されました。そして千年以上、京都・奈良・大阪の専門の演奏家によって伝承され続けました。明治時代に宮内庁式部職楽部が創設され雅楽を伝承しています。

雅楽の種類

■ 管絃

 管絃(詩歌管絃)は雅楽の最もオーソドックスな演奏形式で、洋楽のオーケストラに相当するものです。管楽器の鳳笙、篳篥、龍笛(吹物)と絃楽器の琵琶、箏(弾物)、それに打楽器の鞨鼓、太鼓、鉦鼓(打物)で演奏される唐楽の器楽合奏です。古くは高麗楽でも行われたようですが、現在ではほとんど演奏されません。
唐楽には壱越調(いちこつちょう)、平調(ひょうじょう)、双調(そうじょう)、黄鐘調(おうしきちょう)、盤渉調(ばんしきちょう)、太食調(たいしきちょう)の六つの調子があります。
管絃の演奏
■ 舞楽

 舞楽は、古く大陸からわが国に伝わった舞踊(舞)とそれに伴う音楽(楽)からなります。舞人が中央の舞台で舞を舞い、管方と呼ばれる演奏者が後方の楽座で楽を奏します。舞は、その伝承から左方(さほう)の舞と右方(うほう)の舞におおよそ分類されます。
 左方の舞は、主に唐とインドシナ東南部の林邑(りんゆう)から伝来した舞と曲、あるいはその様式に準じて国内で作られたものが中心で、紅、金色を基調とする装束の舞人が左方から入場し、その楽は唐楽というジャンルの曲が用いられます。
 一方、右方の舞は新羅、百済、高麗などから到来した舞と曲からなり、舞人は緑、銀色を基調とする装束を着け、右方から入場、楽には高麗楽(こまがく)が用いられます。また左方の舞は楽の旋律に合わせて舞われ、右方の舞は楽の拍節に合わせて舞われるという特徴もあります。
左方舞 右方舞

雅楽の楽器

■ 鳳笙(ほうしょう)

吹き口がついた頭(かしら)に十七本の竹の管が立っています。それぞれの管の根もとには大変小さい合金製のリード(簧)がついていて、それが振動することにより音が出ます。一度に何本かの管を同時に鳴らすことができ、それで和音を奏でます。吹いても吸っても音が出せることはハーモニカと同じで、音色も似ています。リードが大変小さいのでわずかな息の露がついただけでも振動しなくなってしまいます。そのため、火鉢などで楽器を温めながら演奏しなければなりません。
■ 篳篥(ひちりき)

雅楽で主旋律を演奏する重要な楽器です。とても小さい楽器で、表面に七つの穴、裏に二つの穴があいた竹の管に、葦(あし)で作った簧(ダブルリード)をさして吹きます。吹き方によって、同じ指使いのままで音の高さを変えることができる楽器なので、安定した音を出すのがとても苦労する楽器です。平安時代の作家、清少納言は「下手な人の吹く篳篥ほど、うるさくていやなものはない」と書いています。
■ 龍笛(りゅうてき)

竹製の管で七つの指穴と息を吹き入れる穴(歌口)がついています。指使いで音程を変え、さらに吹き加減で高い音域と低い音域を吹き分けます。雅楽では笛の仲間として、この他に神楽笛(かぐらぶえ)と高麗笛(こまぶえ)があります。

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